らじうむの月

生んでみせる

近所の飼い猫しずちゃんがオートバイの陰からわたしを見ている、日記


日記です。


きょう。

日曜日バイトに出かけた時、外はかなり暖かかったから、わたしがくたばってる間に世間は春になっているものだと思っていたのですが、そうではなかった。寒い。


きのう。
食卓に置かれていた中華ちまきを食べたら1時間後くらいにお腹がキリキリと痛み始め、耳がカーっと熱くなって気がついたら顔、頬のあたりが引きつって喉も腫れて息が細くなっていた。中華ちまきにカニが入っているものなのかググる力も失せ、誰もいないし、知らんがな、寝たら治るだろ、知らんがな……と呟いて、出掛けなければならないことを忘れ寝たら海で溺れる夢を見た。夢の中で報連相は社会人の基本だと怒られて、魔女に足をもらう代わりに社会性を奪われた。何かを手に入れるには何かを失わなければならないと言われた。

また、きょう。
友達と会う約束をしていたのに社会性を失っていたので、なんとか春らしい装いをし、どす黒くなっていた顔を春らしく化かし、世の中に溶け込もうとしたが人々は春の装いではなかった。そもそも顔を化かす時点で、砂漠のひび割れた土のようなわたしの肌をなんとか人間のそれにしてくれる馬鹿高い乳液がきれてしまったり、なんかダメだったものね。衣替えの時期を間違えて一人夏服で出てきてしまう人生。掛け違えたボタンの元をたどれない人生。

今日着ている素敵な春物のコート、綺麗なラベンダーの色。店で着てみたら店員さんがお世辞を言ってくれる魔法のコートを買えば社会性が手に入る気がした。2万円は大事だけど2万円で社会性が手に入るなら安いもんじゃん、って買ったけど世の中そんな甘くなかった。

春は嫌いです、夏よりはマシだけど、いつも何かを間違えてしまうわたしに間違いを突きつけるのはいつも春なので、春は嫌いです。色々な人から国語で模範解答を選ぶコツを聴かれるたびに、何故それよりも難しいこと、世の中で正解とされる選択肢を選ぶことを容易くできる人にこれができないのか不思議でならなかった。
こんなにダメなのは多分太陽光を浴びてないのと、気圧と、ビタミンが足りていないからだと思って駅でミニッツメイドを買おうとしたら飲み物の補充をしていたので、ホームで買うことにした。次の電車もその次も1番線発だったけど2番線ホームにしか自販機がないからそこまで行ったら駅員に「お客さん間違えてますよ、次の電車はこっちじゃないですよ、1番線ですよ」と言われ間違えてない、間違えてるのはお前だ、自販機が1番線にないからじゃボケと思ったが言えず泣きそうになった。口がパクパクしただけだった、まぬけ。

家を出た時にバイクの陰からわたしをみていた近所の飼い猫しずちゃんを思い出して山手線に乗っている。5日前に観た美しい映画のことを思い出す。世の中の中華ちまきを全部滅ぼす空想をする。わたしの人生は間違ってないと誰かに強く肯定されたいけど、それだけではどうにもならないこともよくよく知っている。わたしがくたばっている間に降っていた強い雨のとこを考える。雨は好きです。水と、砂漠が好きです。山はあまり好きじゃない。